私は30歳になるのを機に、動物病院での臨床獣医師を辞め、転職活動を経て会社員となりました。
転職したのは、獣医師の資格が優遇されるような製薬会社やペットフードメーカーではなく、一般企業の営業職です。
求人の少ない獣医師の中途採用を、どのようにして乗り越えたのか。
情報が少ないからこそ、転職で悩んでいるあなたに私の体験が役立てば幸いです。
獣医師の資格を捨てた理由
臨床獣医師を辞める人は少なくありません。
労働量に見合わない給料の少なさや、ワークライフバランスの悪さを理由に、3~5年くらいを区切りに辞めていくことが多いです。
中には1年も続かない人もいたり・・・
私も確かに動物病院で働いていた頃は、残業代も出ないのに連日深夜まで働き、休日もセミナーに参加するなど、プライベートが充実しているとは決して言えないような生活ぶりでした。
しかし、それでも私は獣医の仕事が楽しかったです。
では、なぜ獣医を辞めようと思ったのか・・・
それは、“将来のことが考えられなかったから”です。
臨床獣医師として独立開業を目指す場合、動物病院の開業資金は約2000~3000万円と言われています。
借金して開業したところで、どれくらいの利益が出るのか?開業して一生自分の病院を守り続けるのか??
どうしても、独立の道は考えられませんでした。
それなら勤務獣医師として働き続ければいい、と思われるかもしれません。
しかし、企業病院などの大規模な動物病院を除いて、ほとんどの動物病院では定年退職するような年齢まで勤め続けられるような環境がないのが現状です。
特に女性獣医師にとっては、結婚や出産を機に獣医師としてのキャリアを諦めざるを得ないケースが多いです。
自分がどんな人生を歩みたいのか考えたとき、どうしても獣医として働き続ける自分の姿が想像できませんでした。
獣医師として働き続けないのであれば、転職できる年齢のうちに転職した方がよい。
転職するなら、いっそのこと獣医とは全く関係のない業界で働き、新しい経験をしてみたい。
その経験をもとに、いつかなんらかの形で雇われる立場を卒業し、独立したい。
そう考えた私は、院長に辞表を提出しました。
転職活動とその苦労
獣医を辞めることを決断した私は、まずはネットで転職情報を探し始めました。
しかし、「獣医」「転職」などと検索しても、出てくるのは獣医の資格に関連した仕事ばかり。
製薬企業やペットフード、ペット保険の会社などは、獣医師の中途採用を募集していることが比較的多いです。
それに、「せっかく獣医の資格があるのだから、それを活かさない手はない」というのが一般的な考え方ですよね。
私のように、獣医の資格と関係のない業界に転職しようとする場合、選択肢の幅が広がる一方で、「未経験可」という条件付きの求人を探すことになります。
つまり、獣医の経験はメリットにはならず、むしろ「一般企業で働いたことがない」というハンデを背負い、新卒とほぼ同様の扱いになることを意味します。
当然ながら、そのような道を歩む獣医師は少なく、ネットで検索しても十分な情報を得ることはできませんでした。
しかも、転職活動では履歴書や職務経歴書などの書類審査や面接がありますが、学生時代に一般的な就職活動をしてこなかった私たち獣医師にとって、全てが初めての経験。
何をどう書けばいいのか、面接でどう受け答えすればよいのか・・・わからないことだらけです。
途方に暮れた私は、転職エージェンシーに相談しながら転職活動を進めることにしました。
転職エージェンシーでは、書類の書き方から面接対策まで担当の方が親身に相談にのってくれました。
第3者の客観的な目線と豊富な経験で応募書類を添削してもらえたこと、 面接日時や給与の調整など、採用担当者に直接言いづらいようなことを代わりに交渉してもらえたことは、 エージェンシーのお世話になったからこそのメリットだったと思います。
あんなにお世話になったのに無料だなんて、言い方は悪いかもしれませんが、使わない手はありません。
無事、内定。転職を経験して思うこと
約2か月間の転職活動を経て、私は無事に新たな世界へ足を踏み入れました。
3社から内定をいただき、最終的には自分が一番イキイキ働けそうだと直感的に感じた会社でお世話になることに決めました。
動物病院と企業では環境も全く違うし、利益計算や外回りなど、全てが新しく挑戦の日々です。
転職して一番良かったと感じるのは、視野が広がったこと。
獣医学科に入学して、獣医になって・・・という王道のレールから外れたことで苦労もしましたが、新しい世界を知って、生き方や考え方の選択肢が豊かになりました。
新しい職場では会社創立以来の初めての元獣医師として、同僚や上司からペットの健康相談などを持ちかけられ、可愛がっていただいております。
また、しっかり休日が取れたり、福利厚生制度が充実していたりなど、臨床獣医師として働いていた頃に比べて大変快適な環境で仕事ができている上に、年収までアップしました。
反対に、獣医を辞めて一番つらいこと・・・
それは毎日たくさんの動物ともふもふできなくなってしまったこと!!!
完全にもふもふ不足です。
やっぱり自分は動物が好きだったんだと実感したし、獣医っていい仕事だったなと思います。
獣医を辞めて転職しようか迷っているあなたへ
確かに獣医師を辞めると、もふもふできなくなりますし、これまでのキャリアも活かせないゼロからのスタートになるかもしれません。
でも、獣医師として培った患者さんとのコミュニケーション力や、過酷な環境でもめげずに働いてきた体力・精神力は、どんな職場でも活かせるはずだと私は思います。
獣医の資格を活かすもよし、私のように全く新しい世界に挑戦するもよし、とにかくあなたの可能性はまだまだ無限大です。
もし、他に挑戦してみたいことがあるなら、 もし、獣医の仕事に疲れてしまっているのなら、 もし、何かの事情で獣医の仕事を辞めざるを得ないのであれば・・・
転職を推奨するわけではありませんが、転職するか迷っているのならまず行動してみることです。
多くの転職エージェンシーは、相談だけでも無料で受け付けているので、まずは転職サービスに登録だけしてみるのも1つです。
また、まだまだ情報が少ない獣医師の転職市場だからこそ、私の応募書類や面接で聞かれた質問なども、当ブログ内でできる限り公開していきます。
転職を考えるあなたを、私は応援します!